歯科矯正に用いられているステンレススチールやコバルトクロム合金製のワイヤーは、弾性率が高い（右のグラフ「応力歪曲線」参照）ため、「治療初期の使用には矯正力が大きすぎる」「変異量を大きくすると永久変形を起こす」などの欠点があり、これを補うためには、ワイヤーにさまざまなループや複雑な操作を付加する必要がありました。また、加工硬化型Ti-Ni合金製の場合も、前述の線材よりすぐれた特性と低い弾性率を備えてはおりますが、Ti-Ni合金の特長である「形状記憶性」「超弾性」の性質には欠けており、従って、変位量に比例して力が増減するなど、矯正線材として必ずしも満足できるものではありませんでした。
新たに開発されたTOMYの〈センタロイ〉アーチワイヤーは、従来のものとはまったく異なり、「超弾性」と「形状記憶性」の性質を有する画期的なTi-Ni合金線。効率的な歯の移動を可能にすると同時に、歯周組織に適切な生物学的反応を起こさせる力、いわゆる“optimumforce─それぞれの歯の移動にあった力を、しかも持続して与える矯正力”を備えた、ユニークな特性を持つアーチワイヤーです。

3点曲げ試験による荷重………たわみ曲線

このグラフは、各線径とタイプの〈センタロイ〉の3点曲げ試験（37°Cにおいて、14mmのスパンで2mmの変位を与えた時） の荷重─たわみ曲線を示します